パッシブ・アトリエ オーナーの視点

今回は久我山マンション「Eco Mume」のオーナー上谷君枝さんへのインタビューです。
パッシブ・アトリエのリフォームではありませんが、同じコンセプトの健康に配慮した賃貸住宅を建てられた経緯をお伺いしました。

「心身ともに休まる住居」そういう住居としての建物を維持していきたい。

可能な限り化学物質を低減している賃貸住宅というのは少ないと思います。この賃貸事業を始められたきっかけを教えてください。

上谷君枝さんプロフィール

上谷 君枝さん

久我山エコマンション「Eco Mume」(カビ・ダニに効果の高い外断熱構造、接着剤等には有害化学物質を使わず、防腐剤・防虫剤不使用のコルク床、貝てきパウダーの壁など、健康に配慮されたマンション)のオーナー。モンテッソーリ教育を取り入れた「高尾こどもの家」「久我山こどもの家」の園長でもある。

Official web http://www.t-kodomo.net/

上谷さん: この資産は夫が「介護してくれたので、最後のプレゼントだ」と言って、私と娘たちのことを心配して、亡くなる一年前に計画しました。20年の闘病生活を通して、建物が健康に与えることを実感していたのでしょうね。それが、この建物の始まりです。

そこからいろんな方々の協力があり、このマンションが建ちました。

ご主人が所有されていたアパートが生まれ変わったのですね。どうしてこういう仕様にされたんですか?

上谷さん: それは、相根さん(相根昭典氏:健康住宅の第一人者と言われる設計士)との出会いでした。たまたまご本人の講演会に行きました。家に帰り、内容を夫に伝えたところ、「ぜひ、お会いしてお話を伺いたい」ということがはじまりです。

私も、6年位前に相根さんから大変多くの気付きをいただきました。物腰はすごく柔らかいのですが、自分の信念をしっかり持った方ですよね。

久我山エコマンション「Eco Mume」 上谷さん: そうなんです。相根さんがプランされた図面と見積もりを持って、20年来お付き合いのある会計士さんのところへ行ったら、「人に貸すのにこんなにお金をかけるなんて」と反対されたんです。そこで相根さんが会計士さんに説明しに行ってくださいました。

熱意が通じて、反対していた会計士さんの賛同を得られ事業が進むことになりました。

平成17年10月着工して、完成を待たずして主人が12月に亡くなりました。最後のプレゼントに、借金コンクリートをいただきました(笑)

借金コンクリートですか?

上谷さん: この建物は、健康によい、環境によい、こんないい建物はないと思っていたんです。でも現実、社会の理解度は、ありませんでしたね。半年くらい空室が続きましたから。

新築の物件で立地条件も良いのに、空室の原因は何だったのでしょうか?

上谷さん: 建物の特徴が理解されなかったんだと思います。お部屋を見にこられる皆さんは、まず見た目のきれいさを求められました。

新築なのに見た目がきれいではなかったのですか?

上谷さん: 床がフローリングではなくて、揮発性の物質が含まれていない環境負荷が少ないコルクを採用したのですが、見た目が良くなかったんです。

壁は、コンクリートブロックにそのまま「貝てきパウダー」という自然素材でつくられている塗装をしました。せっかく、こちらに見に来られた方に見た目以上の価値を説明できずにいたんです。

そうこうしているうちに、賃貸新聞に(当時の賃貸住宅新聞記事)載ったんです。そうすると、不動産屋さんもだんだん分かるようになって下さって、入居希望の方からも連絡が入るようになって、すぐ満室になりました。

仕様の目的と機能を明確にお伝えできれば、そういうお部屋を探している方々は多いと思います。

上谷さん: 私もそう思います。このようなお部屋を探していらっしゃる方に、どこに、どのように伝えたらいいのか分からないのです。

募集はどのようにされているんですか?

上谷さん: マンションを建てた当時は、不動産屋さんと専任契約をしていました。初めは半年間空室が埋まりませんでしたし、賃貸のルールもなにも分かりません。まずは私が学ぼうと思い他の不動産屋さんを回り始めました。そこで、「この物件は専任ですから、うちでは紹介できません」と言われて、専任媒介契約と一般媒介契約があることを知ったんです。今でもお付き合いをしていますが、その不動産屋さんには本当に感謝しています。

それで、専任契約を止めて、今は空室が出ると、パンフレットを持って、不動産屋さんを回っています。

ご自身でこの手作りのリーフレットをお持ちなんですね。物件を物語にして絵本のようするのは本当に素晴らしいと思います。

上谷さん: 建物の良さを分かってくれて、大切に使ってくださる人に入っていただきたいと思いまして。

日常的なお掃除や家賃の入金などから、入退居の手続きまで全てご自身で管理されているのですか。

上谷さん: はい、共有部分は、私が掃除していますし、お部屋も、大切に使ってくださり、だいたいこの状態で返してくれますよ。

原状回復費はほとんどかかりませんね。

久我山エコマンション「Eco Mume」の部屋内部 上谷さん: ええ、でもクリーニング代は、有害物質の含まない洗剤で時間をかけて掃除をしますので、通常の部屋より少し高くなりますが。

壁の塗装を塗り直す費用が含まれるからですか?

上谷さん: そうなんです。脱臭・吸湿効果のある貝殻パウダーを壁面に塗りこんでいきます。

床は、先ほどお話したように、自然素材ですから、今日のような雨の日でも、そんなに湿気を感じません。

自然素材は調湿性能がありますからね。

久我山マンション「Eco Mume」外観 上谷さん: 自然素材は、いいですよね。私も、モンテッソーリ「こどもの家」(モンテッソーリ教育に基づいた幼児教室 http://www.t-kodomo.net/)を主宰していますので、環境がどれほど子どもに影響を与えるかは、日々感じます。アトピーやアレルギーで苦しんでいるお子さんは多いですからね。

小さなお子さんをお持ちのご家族は、健康のことを考えて、住宅に気を使う方も多いのではないでしょうか。賃貸住宅で、自然素材のものがあれば、そちらを選ぶと思いますね。

若い方でも、健康的な住環境を期待している方はいるんじゃないですか?

上谷さん: そうですね、いらっしゃいます。3.11東日本大震災後は増えましたね。だから、そういう方が見学にこられると、入居を決めるのは早いですね。

入居されたらこの建物のよさが理解されるのでしょうか、更新時に退室された方は、今までないんですよ。それは、うれしいですね。

オーナーの皆さんにお聞きしているんですが、このマンションのコンセプトは何ですか?

上谷君枝さんと一緒に 上谷さん: 「よりよく生きること」です。つまり、自分のやりたい事をやれる人生、それを仕事にし、そのあとに経済がついてくる。健康で働けること。そのためには、心身共に休まる住居が必要になってきます。そういう住居としての建物を維持していきたいと思っています。

この建物は、主人をはじめ、相根さん、会計士さん、主治医の先生、そういったみなさんの厚意でできたものですから、それを大切にしたいです。これを、娘たちにも伝えていかなければなりません、ですからマンションの掃除は家族で交代でしています。

しかし、賃貸経営がこれほど大変だとは思いませんでしたね。

年に2回、1月と8月にカンボジアに行くんです。学校づくりのボランティアに参加しています。いいですよ。エネルギーをもらって帰ってくるんです。土田さんも一緒に行きませんか?

お誘いありがとうございます。話しをお聞きできて本当によかったです。

建物を守るということは、そこに住まう人の満足が無ければ実現しないんじゃないかと思います。その満足を維持していくために、上谷さんが日々努力されていることは、本当に頭が下がります。

株式会社レジナより