パッシブ・アトリエ オーナーの視点

初回はコート池上のオーナー 箕輪弥生さんへのインタビューです。

いままでオーナー業をされてこられたご両親から、約1年前にマンション経営を引き継がれました。今回パッシブ・アトリエにリノベーションした「コート池上401号室」にてインタビューをさせていただきました。

Vol.1「オーナーが考える部屋の差別化とは?」

もっとも重要視されているポイントはどこですか

箕輪弥生さんプロフィール

箕輪 弥生(みのわ やよい)さん

環境ライター・マーケティングプランナー
1989年にフリーランスのマーケティングプランナーとして独立。
その後、環境をライフワークとして、環境に配慮した商品の開発や企画、環境にかかわるライフスタイルやビジネスについての記事執筆など、暮らしと環境にかかわる情報発信を行っている。
NPO法人「そらべあ基金」理事
著書に『LOHASで行こう!』(ソニー・マガジンズ)『あなたにもできる!環境生活のススメ』(飛鳥新社)などがある。

Official web http://gogreen.petit.cc/

箕輪さん: 経験豊かなオーナーではないので、甘いと思われるかもしれませんが、もともと不動産業界の古い概念には、疑問を持っていました。価格をいかに安く抑えて、メンテナンス費用を抑えて、入居者が途切れないようにする、といったことが最優先とされてきましたよね。しかし現状は、賃貸市場は空室だらけの状況になってしまっています。

私は、「自分が入居するとしたら、どういうポイントで選ぶだろうか?」と考えました。もともとマーケッティングの仕事をしていたので、エンドユーザー側の視点に立つ癖がついています。いくら立地がよくても、ビニールクロスで、安かろう悪かろうの素材を使った部屋には、入りたくないんです。接着剤からどれだけ有害な物質が出ているかということを、自分自身がよく分かっていますから。

すべてに敏感に反応してしまう化学物質過敏症になってしまうと、本当に深刻で行動が制約されてしまいます。誰にでもその危険性があるんですよ。健康な人でも、化学物質への耐久性があるかないかで、ある日、バケツから水がこぼれるようにオーバーフローしてしまう。

住む場所というのは、一番安心していたい居場所ですよね。
自然素材は調湿性能があるし、すごくいい、ってことを自宅でも実感していたので、賃貸の視点に立っても、今までの画一的な内装というのが、どうなのかな?と思っていました。

自然素材の良さを実感されたご自宅についてお聞かせください

箕輪さん: 建ててからもう11年になります。太陽熱を利用した、OMソーラーハウスです。今の時期だと、ほとんどガスを使わないでお風呂に入れますよ。太陽の恵みを感じます。空気が循環しているためか、湿気がなく、冬はほんわか暖かく、夏は涼しいんです。

パッシブ・アトリエオーナー箕輪さん

コート池上401号 リビング
壁は漆喰 フローリングは無垢材を使用

壁は、吹き付けですけど、珪藻土にしました。ペットを飼っているんですが、匂いもないし、結露もないし、10年以上たちますが、ほとんどメンテナンスの必要がありません。主人が始めの5年くらいタバコをすっていたのですが、壁が黄色くなることもありませんでした。ちょっとベージュっぽくなったような・・・、というくらいです。言い換えると空気清浄機や加湿器の代わりにもなるんですよ。壁は面積が広いですから、電気を使わず自然の調湿性能というのはすごく大きいですよね。

実はそれ以前に住んでいた建売の家は、結露がすごくて、特に地下のお部屋は全く使えませんでした。あらゆるものにカビが生えてしまって、鞄なんて置いておいたらカビの展示場みたいになっちゃって。換気もしていたし、除湿機も置いていたんですけど、全然ダメでしたね。

今の家は、壁の素材だけじゃないですけど、OMソーラーが換気もしてくれるので、10日間家を空けて帰ってきても、空気がよどんでいないんです。

今回、リノベーションさせていただいたコート池上ですが、天井はケナフが配合されたクロスをアクセントとして使っておられましたね

箕輪さん: はい、東リで以前から流通しているタイプのものです。そんなに高くないですよ。

和室のリノベーション

コート池上401号室 和室

リノベーションの際、天井は張り替えずに、そのクロスを残しました。壁は漆喰を塗っていただきましたが、ここ(和室)の天井は以前のままです。天然素材のため、傷みが少なく、変色もありませんでしたから。他のクロスは全部ダメでしたよ。

自分の体感もあって、前々から疑問に思っていたことがあります。入居者さんが変わる度に、クロスを張り替えるのは不経済だし、ゴミも増える。結局、天然素材は初期投資はかかりますが、長い目で見れば、オーナーにとっても、入居者にとっても大きなメリットがあります。

本当は自宅のフローリングも無垢材にしたかったんですが、当時は工務店さんの大反対にあって、実現しませんでした。「無垢材はあばれるから」と言われて。でも、笑い話ですが、今そこの工務店さんの施工は、ほぼ無垢材を使っています。

箕輪さんの発想が起点になったんじゃないですか

箕輪さん: そんなことないですけど、その工務店さんは今、エコハウス的な取り組みを主流に売り上げも上げています。建築家と組んでいろんな取り組みをやり始めています。私が頼んだときは、まだ途中だったんですね。OMソーラーはやってくれたんだけど、壁はクロスでした。珪藻土を頼んだときも、「高くなりますよ」と言われて。値段を見て、「高くないじゃないですか」って言ったら、「職人が数日入りますから工賃がかかります」ということで、コテ仕上げより工程が少ないといわれた吹き付けにしました。建てた当初はボロボロこぼれてましたけど、ホウキでお掃除すればすみますから。

賃貸は立地に左右され、新築だと家賃が高く、築年数が経つと家賃が下がりますよね

箕輪さん: 不動産業界は、住まいが古くなったら家賃を下げないといけない、という固定概念から抜け出せていませんね。イギリスはじめヨーロッパ各国では築100年超の物件があって、その方が新築よりも賃料が高く価値が高まるようなものもありますよね。

日本家屋もそうですけど、京都や奈良に行けば、古いものって、やっぱり良いものがいっぱいあるじゃないですか。決して、古い=価値が下がるということはないと思います。日本だけですよね、「10年住んだら建物の価値はありません」と言われるの。

きちんとメンテナンスしていて、ちゃんとしたお家は、価値が下がらないようになっていかないとおかしいと思います。

だから、募集も東京R不動産にお願いしました。「駅から○分。○LDK」という画一的なものじゃないところでやろうと思ってたんです。そして、せっかく、両親のおかげでこういう機会に恵まれたんだから、「内装で差別化できたらいいな」と思いました。